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アパートの鍵貸します

『アパートの鍵貸します』
こういうタイトルの映画があった。ビリー・ワイルダー監督のアメリカ映画(1960)、舞台はニューヨーク。ジャックレモンとシャーリーマクレーンが主演。保険会社に務めるバド(ジャックレモン)が自分のアパートを同じ会社の偉い人達の逢い引きに時間貸しする、というお話。若かりし頃のシャーリーマクレーンが可愛い。

アパートの鍵を貸す?私たち日本人は気軽にはしないかな。
私自身は海外の友達のアパートに泊めてもらった際に、この経験をした。それも1度ではなく。おかげで『アパートの鍵を借りる』という発送自体は、珍しいことではなくなった。

最初は驚きと新鮮さと・・・が入り交じったような気持ちで、鍵を受け取った。それは、オランダ・アムステルダムのMariekeのアパートに泊めてもらった10数年前のこと。いつものように仕事に出かけて行った彼女は、私にアパートの鍵を預けた。市内中心部までの行き方、何かあったら・・・と自分の職場の住所と行き方をメモしたものを残して”Have a good day! ”と鍵を手渡される。「えっ・・・」彼女を送り出し、一人残された私・・・心もとなかったけれど、まあ何とか過ごすしかない。翌日も、その翌日も朝仕事に行く彼女を見送り、アパートの鍵をかけて出かけた。少しづつ慣れてきた。週末には、そのアパートのそばの広場で開かれるファーマーズマーケットに出かけて、パンやチーズを買って部屋に戻る・・・住人気分。いいな。

一昨年秋は、パリでアパートの鍵を借りた。パリ郊外に家を持ち、パリのアパートへは仕事がある週2〜3回住むNadineの「おいでよ。」のひと言で、そこの泊めてもらった。それにしても厳重なチェック、アパートに入るまでに暗証番号①→暗証番号②→鍵、そしてやっと部屋に入ることができる。フェンスで覆われた敷地内に入るための暗証番号①、アパートがある建物に入るための暗唱番号②、そして部屋を開けるための鍵・・・何て長い道のり・・・慣れないうちは少し緊張しながら、Nadineが寝ている間に、朝近くのカフェに朝ごはんを食べに行くことすら、「もし暗証番号が違っていたら、もし鍵が開かなかったら・・・」と想像しては、ドキドキした。彼女とは鍵の約束があった。1つしかない鍵を、それぞれの行動でアパートに出入りするNadineと私は内緒の場所に鍵を置いて出かけた。ふむふむ面白くなってきた・・・頃にそのNadineとそのアパートにさようならの時。地下鉄の降り口も、そこからの道もわかった頃に。残念。

”外国でのアパート暮らし”にすっかり味をしめた私は、違う都市でもアパート暮らしを、とニューヨークに滞在する際も短期アパートを借りた。2回。そして、この度3回目のNYアパートステイ。世界中のアパートを検索、予約できるウェブサイトを見つけ、たくさんの物件の中からロケーション、滞在費など見合うところを決めた。そのサイトには、アパートの外観・部屋の写真はモチロンのこと、ストリートヴューでご近所の様子も見ることができる。更に、オーナーの写真、プロフィール、メッセージも載せてあるから人柄が伺われ、へぇ〜こんな人もいるのねーと感心することしきり。しばらく、ネットサーフィンしながら、ニューヨーカーに出会った気分、楽しいアパート探しだった。

さて、そうして決めたYaleさんのアパートは、NYローアーマンハッタン・グラマシー地区にある。地下鉄23rd Streetを降りて、2ブロック歩いて・・・East 25th Streetへ。100, 143・・・220 あった! 

ふぅ〜 スーツケースを引きずって、ようやく到着。知らない土地を歩くのは、思いのほか遠く長く感じるもの。ほっと一息、も束の間、ここからが大変だった!鍵が置いてある(秘密の)場所を見つけて、アパートの鍵を開けなければならない。Yaleさんの説明を念入りに読む。When you are facing the staris to 210, there are also・・・  ん?! 1)〜4)まで詳細に書いてあった説明の、早速2)で引っかかる。・・・there’s a hidden key on the top ・・・ You might need to stand on toes・・・ どうゆうこと? Yaleさんに電話、何度も説明してもらう。なんと、地下のドアの上部分左端にその鍵①があった。「つま立てして届くかも。」と書いてあったけれど、私は”ジャンプ”しないとその鍵に届かなかった。

やれやれ・・・それで終わりではない。アパートに入るための格闘(?)はまだ続く・・。ジャンプして見つけた鍵は郵便受けの鍵、郵便受けを開けると鍵入れが入っていた。更に暗証番号でその鍵入れを開け、そのなかにアパートの鍵・・・ そして私たちがステイするのは、どのアパート?!・・・ それから何度Yaleさんに電話したことか、彼はその度に親切に丁寧に教えてくれた。すんません、Yaleさん。

まるで暗号を解いていくような、アパートへ入るまでの長い道のり!部屋に入った頃には、プチ達成感と共にぐったり疲れていた。

何せ私はYaleくんの知り合いでも何でもなくて、面識もないのだから。もちろん、エージェントを通して、宿泊料を支払ってのビジネスではあるけれど、こうして他人に『アパートの鍵貸します』というのは、慣れない。私にとっては”鍵を預ける=信頼”、と思っているので。ネットに載っていた写真ではわからない部屋の匂いや、本棚に並べられた本、食器棚の食器や調理器具など・・・住人の暮らしの気配が感じられる。会ったことのない他人のアパートの鍵を持ち、住むというのはやはり不思議な感覚。Yaleさんって誰?未だに未知である。 


鍵がきっかけになったり、ストーリーの鍵を握る映画や本もある。” key person”  , “key sentence”, “key to success”・・・など英語には多くのkeyを使った表現があるから、やはり鍵は大切。あなたはアパート/家の鍵を、誰になら貸しますか?

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