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年神様

大掃除、しめ縄、年越しそば、除夜の鐘、 お屠蘇、おせち料理、初詣・・・お正月を迎える準備に追われる。お正月は私たち日本人にとって特別な日、1つ1つが儀式であり、身が引き締まる思いでお正月までの日々を過ごし、迎える。とは言っても、現実には大おそがし大わらわ・・・「年内に!」という思いが働き、あれもして、これもしなくちゃ・・・と慌ただしく過ごすのではあるけれど。

アメリカに住んでいた頃の年越しには、物足りなさを感じた。ニューイヤーパーティをして、シャンパンで乾杯!大騒ぎ〜 年が明けても何ら特別感はなく、いつものような正月三が日。「お正月は日本がいい!」としみじみ異国で過ごしたお正月の後に思ったものだ。

その後随分経ってから「日本には”年神さま”がいて、お正月は年神様を迎える宗教行事の1つである。」ことを知った。門松を立てるのは年神降臨の依代として、しめ縄を張るのは家の入り口の聖と俗を分かつものとして、鏡もちを飾るのは神への供え物の意味がある・・・など。おせち料理は、節目毎に作物の収穫を季節毎に神様に感謝してきた節句料理の1つで、弥生時代を起源とすることなど、1つ1つに祈りと願いが込められていることを知るにつけ、感慨深くなった。

それにしても、私たちはこのような習わしの意味を知って行っているだろうか。
もしかして、”習慣だから”と何となくやっているのではないか。

私も、英語で外国の人々と知り合い、わかり合おうとすることがなかったら、ここまで日本について知ろうとしたり、深く考えなかったのではないかという気がする。英語で話していると、日本人である自分を突きつけられる。物事の受け止め方、考え方、人との接し方、感受性、価値観・・・「あー私は日本人だなぁ。」と気づかされる。異文化と接触することによって自分のアイデンティティー、ルーツに思いを馳せることになる。日本を訪れる外国人、日本が好きな外国人と接する度に、日本について、日本人について聞かれる。「なぜ日本人は・・・?」外国の人々に問われる”Why?”に即答できずに困る・・・ことを繰り返すなかで、その都度調べたり、また外国人の目線で日本を観るようになってきているのかもしれない。

さて、話しを年神さまに戻して・・・
私たち日本人は神様をどう捉えているのだろう。私たちにとっての神様とは?
神道によると、日本には八百万の神が存在すると信じられている。「日本はクリスマスも祝い、お正月も祝い、結婚式は神社でお葬式は寺で・・・いったい日本人の宗教心って何なの?」などと言われることがあるけれど、これについては私もいつも上手く説明ができずにいた。そんな折「日本は仏教が伝来した飛鳥時代からずっと神仏習合の文化だった。どっちか選択しろと言われても選択できる人はほとんどいない。それだけどちらも深く根づいている。日本人は無宗教なのではなく、自分が信じていない他の宗教にも敬意を表すことができす。あらゆる神様を受け入れる許容があるのです。」という 池上彰氏著書の文を読み、合点した。救われた気がした。そうか!だからか!教会に入ったときの神聖な感覚や、神社の鳥居をくぐったときの清められるような気持ち、それらは似ているかもしれない。それは私たちが唯一絶対の神を信仰しているのではなく、神の存在をあらゆるところに感じることのできる八百万の神様が宿っているから。私たちの心に住んでいる。どの神様が優れていて、どの神様が劣っているなどというのではないのだから。祖先の霊、太陽神、風の神、海山川のご神霊・・・年神さまも、そんな八百万の神様の1つ・・・だろうか。

年神様の存在を認識した年の初め、2016年の始まり。 年神様がみている。年神様が守って下さっている。今年も佳き1年となりますように。

【参考文献】
・『池上彰の宗教がわかれば世界が見える』池上 彰(文春新書) 
・『日本の神々と仏』岩井 宏實 (青春新書)
・Annual Events in Japan Autumn and Winter  Written by Noriko Takano (絵本の家)

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