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セーラジャーナル

英語さんぽ道

麦の唄

 仏リヨンからパリ・シャルルドゴール行きの列車に乗り込んだ。2時間後到着予定。リヨン駅で買ったバゲット1本を片手に列車に乗る。これがフランス最後のバゲットだなあ〜・・・車窓から流れる景色を眺めながら、あー旅心いっぱい。

そろそろ到着の時間・・・と思いきや、列車は止まりそうなほどのノロノロ運転・・・あれ・・・?しばらくすると、アナウンスが聴こえる。フランス語だからわからないの。隣の女性に英語で訊くと、列車が遅れていることを教えてくれた。30分遅れ・・・またアナウンス、1時間遅れ・・・遂には2時間遅れると。えーーーーっ!その到着予定時刻では、ミラノ行きの飛行機に乗り遅れるーーー!!

アナウンスが流れると、乗客たちは少しざわついてはいるものの「まあ、そういうこともあるよね。」という雰囲気で、動じていない。セラビ〜 どんなにあがいても、列車を速く走らせることはできないのだから仕方がない。私は、乗り遅れてしまう飛行機をどうするか等、考えられる術を全力で考えて腹を決めた後は、列車に身を委ねる。目の前のバゲットが調度いい時間つぶしと小腹を満たしてくれる。ふぅ助かった。

窓の外に目を移すと牧歌的な風景が広がっている。一面の小麦色の広野がどこまでも続き、ところどころで羊や馬が草をはんでいる。その光景に、農業国フランスを思う。ぼーーっとその景色を眺めながら、心に聴こえてきたメロディ〜♪


なつかしい人々 なつかしい風景
その総てと離れても あなたと歩きたい

麦に翼はなくても 歌に翼はあるのなら
伝えておくれ故郷へ ここで生きてゆくと
麦は泣き 麦は咲き 明日へ育ってゆく




NHK朝の連続ドラマ『マッさん』の主題歌、中島みゆきの『麦の唄』だ。昨年の紅白歌合戦で中島みゆきが歌うこの歌に感銘を受け、『マッさん』を見始めた。するとタイヘン、タイヘン!観ずにいられない。毎日12時45分は『マッさん』の時間、テレビの前に座り、マッさん、エリーと共に泣き笑い。2014年秋〜翌年春までのNHK朝ドラ『マッさん』はサントリー創業者竹鶴政孝の実話を基に、ウィスキー作りに情熱を注いだマッさんと妻エリーの物語。ドラマが終わった後はしばらく”マッさんロス”になっていた私。このドラマの冒頭に流れるのが”なつかしい人々 なつかしい風景〜”で始まる『麦の唄』。パグパイプのオルガンの前奏が流れると、始まりの合図。黄金色の麦畑のなかで若かりし頃のマッさんとエリーが見つめ合いハグをするシーンが蘇った。

麦芽で作られるウィスキー、
♪麦に翼はなくても、歌に翼があるのなら〜伝えておくれ故郷へここで生きてゆくと〜♪故郷スコットランドを離れ、日本にやってきたエリーの思いを麦に託すとは流石うまいな〜 2時間の予定が4時間の列車の旅になった私は、外の景色を眺めながら何度も何度も『麦の唄』を心で歌いながら、小麦に思いを馳せた。

ウィスキーの他に小麦が原料のものは・・・
パンもパスタもケーキもうどんもそう。お好み焼きだって、たこ焼きだってインドのナンだって、韓国のチヂミだって、小麦粉がなくちゃできない。そう、目の前で私がかじっているバゲットも小麦からできている。小麦粉はエライ。

エリーは、”麦に翼はなくても、歌に思いを伝えておくれ”と託した。列車に揺られるしかない私は『麦の唄』は♪麦に翼はなくても、歌に翼があるのなら〜伝えておくれ〜飛行機へ、私は遅れると〜・・・♪

かくして、シャルルドゴール空港に到着したときには、私が乗る予定だった15:25発ミラノ行きの飛行機は既に経ってしまっていた・・・C’est la vie・・・

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