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ひまわりとゴッホ

8月、夏。夏の花といえば”ひまわり”が思い浮かぶ。太陽の光に向かって花を広げるひまわりは、太陽そのもののようでもある。”サンフラワー”ですもの。

”ひまわり”を描いた画家といえばゴッホ(Vincent Van Gogh 1853-1890)。”ひまわりの画家”とも言われた。日本の浮世絵に強い影響を受け、光を,求めたゴッホは、全部で12点の『ひまわり』を残した。その内7点がアルル時代に描かれたもの。弟のテオとパリで2年過ごした後、彼はアルルに移り住む。絵にも描かれた『黄色い家』を借り、そこにゴーギャンを招いた。そして、ゴーギャンを迎えるアトリエに飾るために『ひまわり』の絵12枚を描く計画をする。ゴッホは、尊敬するゴーガンを待ちわびていた。アルルに移住してから、ゴーガンを待つ間にもっとも精力的に作品を創り続けたという。

ゴッホが描いた”ひまわり”が、必ずしもサンフラワー、太陽の輝きを意味するわけではないことを知った。ゴッホは、常に愛情に餓えていた。認めてほしい、自分に気づいてほしい、自分がここに在ることをわかってほしい・・・幼少時代に求めても得られなかった愛情への渇望を彼は、キャンバスの上に表わしたという。なぜゴッホが黄色を多く使ったか、ということについて、色彩心理学者 末永蒼生氏は、著書の中でこのように書いている。

     ゴッホは、友情や愛情を激しく求め続け、画家として
     認められることを切実に願いながら、そのどれも果たせず
     人生を終えた人でした。彼の激しい生き方の中から、
     「ひまわり」シリーズをはじめ、「黄色い家」、「寝室」、
     「鳥の飛ぶ麦畑」など鮮やかな黄色を使った有名な作品が
     次々に生まれたのです。ゴッホの絵からは、絆への欲求を
     黄色という色に託した彼の痛々しいほどの想いが伝わって
     きます。ゴッホのなかには、ずっと子どものような純粋な
     希望が渦巻いていたのかもしれません。
                      (『色の力 色の心理』 末永蒼生著)

なるほど、表現者は”光”があるから光を描くのではなく、”光”がないから”光”を描くこともある・・・と思った。

「尊敬するゴーギャンが、やって来る。」、「もうひとりぼっちではない。」という感触は、彼に力を与え、よりキャンパスへ向かわせた。あるいは、ひとりぼっちを埋めるために、描き続けたのか・・・。

ゴーギャンは、ゴッホの才能に嫉妬し恨んでいたという。ゴッホの片思いだったような、2人の関係、共同生活は、結局2ヶ月で終わり、クリスマス直前の日曜日、ゴッホは自分の耳にかみそりをあて、ゴーギャンはその夜のうちにゴッホのもとを去っていってしまうことになるのだが・・・。

何年も前にオランダにある『ゴッホ美術館』を訪れたとき、「あーあの有名な”ひまわり”だ。」くらいの軽い気持ちで見た名作に、再び出会いたい。作品に込めたゴッホの想い、叫び、ゴッホの内なる声を少しでも感じることができるだろうか。

そんなゴッホの悲しみや憤りを胸に、太陽に向かって咲くひまわりを見上げると必ずしも明るさの象徴、太陽の花、とは感じられないだろう。花は、見る人の心根によって様々な姿を心に映してくれるものなんだ、と知る。花は、何も求めずにそこに咲いているだけなのに・・・。

今日も世界中の人々は、それぞれの想いで花を見つめているだろう。


                                        参考文献
                 『ふたりのゴッホ』 伊勢英子著(新潮社)
                 『にいさん』 いせひでこ(偕成社)
                 『色彩セラピー入門』末永蒼生著(PHP文庫)









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